「一緒にユーザーさんのライフステージを変えていきたい」株式会社エウレカ 金子 慎太郎氏
GEEK JOB編集部
「お金の通り道に発生する摩擦を減らす」という理念を掲げ、無料送金アプリ「pring(プリン)」を運営する株式会社pring。
本記事では、同社でCEOを務める荻原 充彦(おぎはら みつひこ)氏へ、同社の魅力や、pringを使って世の中をどう変えたいのかを伺ってきました。
板前として社会人をスタートし、エンジニア、大和総研での新規事業立ち上げ、DeNA、メタップスと様々なキャリアを歩んできた荻原さまがなぜpringを作るに至ったのか、その経緯も合わせてお届けします。
すごく簡単に言うと無料で送金ができるアプリです。
アプリ上から個人間でお金を「おくる」「もらう」、そしてお店に「はらう」といったことが手数料なしで簡単にできます。
今年3月には、セブン銀行さんと提携し、セブンイレブンのATMからも手数料無料で現金化することができるようになりました。
そうですね。
近年のキャッシュレス化の流れとは違うんじゃないかという意見もあるかと思うんですが、ユーザーさんのことを考えると病院の支払いなど現金が必要なケースってまだまだ多いので、現金化できるという利便性は大切にしています。
もちろん、完全なキャッシュレス化というのも長い目では見ています。
まず、目的が違います。
他社さんのサービスは、自分たちのサービス内でお金の動きを活性化させたいという思いがあると思うんですね。その場合、別のところにお金を動かすのには手数料がかかったり、直接現金化することはできなかったりします。
pringの方は「お金の通り道に発生する摩擦を減らす」という理念のもとに運営していて、お金を動かす時にかかる手数料というもの0にすること自体が目的です。
ですので、先程言った通りpringにチャージしたお金を現金化する際にも一切手数料はかかりません。
お金を振り込んだり下ろしたりするたびに手数料がかかる、ということにずっと疑問を抱いていました。
だって、自分のお金を動かすのにお金がかかるのっておかしいと思いませんか?
手数料とは言っても、今どきほとんど自動化されていて手数なんてかかっていないのに、そこに対して手数料を取るビジネスモデルは今の時代に合っていないと思っているんですね。
手数料以外の方法でマネタイズができれば、このよくわからないところにお金が消えるというシステムをなくすことができるんじゃないかと考えたのが、pringを作ろうと思ったきっかけです。
板前は、大学を卒業して一年くらいフラフラしていた時に、当時付き合っていた女性に「まともな仕事をしなさい」と言われて、僕の中でまともな仕事=飲食業だったので板前になりました (笑)
料理の仕事は大方覚えたのですが、2年ほどやって自分には向いていないことがわかりました。
こだわりがなかったんですよね…(笑)
板前という仕事に情熱を持って本気で取り組んでいる人に比べて特にこだわりが無かった。お米の炊き方1つまでこだわっている同僚を見て「自分はこうはなれないな」と感じました。
とりあえず板前を辞めてサラリーマンになろうかなと考えていて、エンジニアを選んだのは消去法でした(笑)
当時は今と違って第二新卒というブランドもなかったので、転職するとなったらごりごりの営業か運送屋か、未経験歓迎のエンジニアくらいしかなかったんですね。
これからはコンピューターの時代だし、その中だったらエンジニアがいいなあくらいの気持ちで選びました。
全く無かったです。ブラインドタッチもできなかったです(笑)
エンジニアとして雇われたものの、最初はテスターや手順書の作成の仕事しかなかったです。
本当に下請けの下請けの会社だったので、コードを書くなんて仕事はありませんでした。
そうです。コードを書く仕事は自分から取りに行かないといけないんです。
そこでずっとガラケーのデバック作業を延々とやっている中で「これはやばいな」と感じて、まずは自分がプログラミングをできるようになってアピールしなければと思い、資格をとにかく取りました。
当時はJavaが流行り始めた頃で、Javaエンジニアが不足しているのはわかっていたので、Javaに関する資格をたくさん取得してJavaができることをアピールしました。
その後、DB設定にもかかわりたいと思い、Oracle Goldを取得したり、ネットワークも理解したいと情報処理のネットワーク技術者を取得したり。
これまで会った上司の多くは、部下の成長や将来のことを考えてないと思いました。ですから、自分がなにをしたいか、したいことに対して会社に貢献できることを上司に証明して、仕事をとりにいかないといけないと思います。
他人は自分以外の人間にどんな能力があるか知らないし、もっと言うと大して興味がないので、 自分ができることや取った資格をPDFにまとめて部長に送りつけていました。「Java書けるぞ、おれは。Javaの仕事とれば会社も儲かるでしょ」って笑。そこまでしないとプログラムを書く仕事はまわってこなかったです。
そうですね。
そうやってアピールした結果、開発の仕事に入れるようになってしばらくいろんな開発を経験しました。
ただ下請けなのは変わらないので、作れるものもこのシステムのこの画面だけとか、この機能だけ、といった一部分の開発にしか関われなかった。
その頃僕はもっと全体の設計に関わりたいと思っていたので、全体を作っている会社に入りたい、むしろ僕らに仕事を下ろしている側に入りたいと考えるようになっていました。
給料も安かったですし (笑)
その頃は今みたいに勢いのあるベンチャーが多い時代ではなかったので、全体設計に関わるとなると大手に入るしか無かったんです。
そこでいくつか大手の選考を受ける中で幸い大和総研に引っかかったので、そこでしばらくインフラまわりの全体設計に関わっていました。
下請けとしてプロジェクトに参加すると、大手の方と一緒に仕事 をすることになるのですが、一緒に働いているうちに「自分にもできるんじゃないか?」と思うようになっていました。
システムを設計しているうちに、どうやってこれがビジネスになるんだろうかというのが気になっていたんです。
そのタイミングで社内公募があって、アナリストのポジションを募集していたので、そこに飛びついたのがビジネスサイドとしてのキャリアのスタートでしたね。
そこからDeNAに転職して、いくつか新規事業の立ち上げに関わったあとメタップスに参画し、株式会社SPIKEの代表として決済サービスSPIKEを3年で黒字化させたあと、2017年にみずほFG、みずほ銀行、WiLと一緒に株式会社pringを立ち上げて、現在に至ります。
ほんとですね(笑)
ただ、みなさんにお伝えしたいのは、自分からどんどん動いたほうが良いということ。今の時代は前のめりに生きていく方がいいということです。
そして、自分からスキルを身に着けて「自分はできる感」を全力で出すことが大事です。
送金アプリとしてもビジネスモデルが他と全く違うので、世の中の当たり前を変えるという、今までにないサービスを作ろうとしているのは面白いと思います。
僕らはpringをより多くの人に使って多くの人に使ってほしいと考えているので、ユーザーにとって良いことであればなんでもやります。
pringには「こうしなければいけない」というルールもないので、自分のやりたいことをやるハードルは低いです。
新しい技術を使うとか、使っている技術やツールを変えるというのも「なぜそれがいいのか」という理由を説明してもらって、そこに合理性があればすぐにできます。
開発を手伝ってくれている方たちも非常に優秀な方が集まっているので、そこで技術やノウハウを得ることもできると思います。
昨年に行った12.8億の資金調達は印象に残っています。
資金調達ってpringというビジネスにどれだけ期待をしてもらえるかという指標でもあるのですが、サービス開始してまだ半年の時期に、あれだけの金額を出資をいただけたのは、自分たちへの期待値が非常に高いというのを感じました。
「お金の通り道にお金はかからない」という世界を作りたいと思っているので、お金を動かす時にかかる手数料という概念を無くしたいです。
僕らが集まっている目的は、pringというサービスをどうやって良くしていくかということだけなんですね。
なので、どうしたらよりpringが良くなるか考え続けることができる人に集まって欲しいです。
pringはまだまだ始めたばかりで、耕さなければいけない土地が広大に広がっています。それを自分からどんどん耕していける人がいいですね。
逆にあまり制約がないので、指示待ちになってしまう人は向いていないと思います。
簡単なものでもとにかく何か1つ作ることですね。
いろんな理屈やノウハウだけを理解していても、結局エンジニアは作れないといけないので、作る力を身につけるのが一番です。
プログラミングの勉強も今はしやすくなっていますし、やってみればそんなに難しくは無いはずです。